公害紛争調停と住民監査請求に関する学習会を開催しました!

10月12日午後6時から、NPO地域づくり工房の代表理事、傘木宏夫さんを講師にお招きし、公害紛争調停と住民監査請求に関する学習会を開催しました。

公害紛争処理制度とは

開発行為が適切な環境保全対策を講じようとせずに実施されることが判明した時に、公害の発生を防ぐ手段として、公害紛争処理制度の利用が選択肢としてあるそうです。東京都の公害審査会に申し立て(あっせん、調停、仲裁の3種類がある)、申請者は個人でも法人でも団体でもOK。手数料がかかる場合でも数千円程度。ポイントは、公害が発生する前に申し立てができるという点です。開発計画を撤回させることはできないとしても、開発事業者との間に話し合いの回路が開かれ、公害防止協定の締結などに結び付けられる可能性があります。

交通問題を公害紛争処理制度で取り上げることも可能

傘木さんのお話によると、渋滞そのものは公害ではないとしても、渋滞によって生じる「騒音」「大気汚染」「振動」は典型公害そのものですから、公害紛争処理制度を利用することができるそうです。制度の概要の説明だけでなく、実際に申し立てた場合の進め方、これまでの事例など、具体的にイメージできる形で教えていただけました。

今後、東京都環境アセスメント手続きにおいて日本GLP社から提出される環境影響評価書(アセスメント)案をしっかり検証し、瑕疵がある場合には、周辺自治会・PTAなど幅広い住民に呼びかけて大規模な住民グループを組織し、東京都公害審査会の公害紛争処理制度を利用することも検討していきます。

住民監査請求の対象となる可能性

昭島市は今後、玉川上水にかかる橋が大型トラックの通行に耐えられないとして、架け替えの工事を行うかもしれません。また、代官山樹林地と玉川上水緑地を分断する新設道路が造られた場合、昭島市が日本GLP社から譲り受けることになると言われており、それ以降は昭島市が道路補修等を行うことになるそうです。こうした行為に伴う昭島市の財政支出は、果たして住民の福祉・利益にかなう適切な支出といえるでしょうか。傘木さんのお話によると、これらも十分に住民監査請求の対象になりえるとのことでした。「考える会」としても、必要があれば監査請求ができるよう、今後さらに学習を深めていきます。

交通渋滞に関する動的(VR)シミュレーション

日本GLP社は、一日5800台(往復11600台)も交通量が増えると予想しておきながら、動的シミュレーションによる影響調査はしない、と説明会で断言しています。これは、「都のアセスメントで義務付けられていないから」というだけではなく、現在の渋滞がさらに激しくなり交通麻痺(複数の渋滞が組み合わさってどの車も渋滞から抜け出せなくなること)が発生することや、そうした渋滞を避けようとする車が細い脇道に入り込み、登下校する児童やお年寄りが交通事故の危険にさらされてしまうことなどが、動的シミュレーションによって視覚的にも明らかになってしまうからではないでしょうか。

学習会では、傘木さんが関わっている動的(3D-VR)シミュレーションソフトについてもご紹介いただきました。生活実感に即した交通量調査や街並みの再現に必要な情報などを、住民が協力して提供し、協働でシミュレーションを作り上げていく手法も考えられるとのことです。

私たちとしては、今後も日本GLP社に対して動的シミュレーションを行うよう粘り強く求めていきますが、合わせて、たくさんの地域住民の皆さんと協力しながら、独自に動的シミュレーションを行うことも検討していく必要があると感じました。

3D-VRシミュレーションのさらなる可能性

日本GLP社は、風洞実験(地形や建物を再現した模型で風の動きを調べる実験)もしないと明言しています。ゴルフ場から玉川上水へ抜ける冷涼な風のおかげで、付近の住宅地も道路も、夏場は非常に過ごしやすくなっていますが、ゴルフ場の樹林が伐採され、玉川上水沿いに高温を排熱するデータセンターが8棟も建設されれば、冷涼な風がなくなるどころか、気温が上昇することが懸念されます。つつじが丘ハイツの風通しも悪くなるでしょう。

傘木さんのお話によると、このような懸念に対しても、3D-VRシミュレーションソフトを利用することで、影響を予測することが可能だそうです。もちろん、物流倉庫やデータセンターの建物が与える圧迫感や日当たりの変化なども、歩行者や住民の目線でリアルに感じられるものが作れるそうです。 今回の学習会では、実際のシミュレーション動画も見せていただき、市民参加によるシミュレーション作成の具体的なイメージや手法を学ぶことができました。

共感と協働の輪を広げて立ち向かいましょう!

考える会では、今後もGLP昭島プロジェクトの問題点を発信し、共感と協働の輪を地域住民のみなさんにさらに大きく広げていきたいと思います。そして、今回の学習会で学んだことをしっかりと活かし、日本GLP社や昭島市に対して、法的手段も含め、より実効性のある手段を検討していきます。

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