第4回学習会報告
2022年9月3日(土)、「生き物その環境」をテーマに第4回学習会を開催しましたので、要旨をご報告します。

大竹共同代表挨拶

この間の学習を通じて実感することは、平穏な生活が乱される、昭島市が大きく変わってしまうということ。大きな海外ファンド相手である。昭島市、東京都、昭島市議会、大きな輪を作っていきたい。学んで仲間を増やし頑張りましょう。

講演1.高槻成紀氏(麻布大学元教授)

昭島地区の開発と玉川上水の自然 -花マップの調査よりー

玉川上水を動植物の面からお話ししたい。
玉川上水は、1653年江戸の水源確保のために開削された。GPSもない時代に、江戸(四谷)まで水を送るにはここしかない絶妙なコースを短期間で掘り進み完成した。江戸の貴重な飲料水であるとともに農業用水としても使われた。上から見ると緑の帯が30キロ続いている。この続いているということがとても意味があることである。

戦後は用水としての機能が弱くなり、高度成長期に小平より下流は水を止め、「自然保護」の考えも普及して、コナラなどの樹木が育った。場所によっては上木を伐って明るくしたところもある。外来種の侵入もある。

玉川上水の植物は常に変化している。その意味では、現時点での記録を残して必要がある。

わかりやすい花の種類を調査・記録する。橋から橋までを1区画として96区画に分け分担する。必ず撮影して記録する。この調査をもとに、四季の花マップを作った。スケッチとエッセイを入れ、オリジナルな情報を書き2017から2019年の正確な野草の分布を掲載した。

玉川上水は高度成長期に、杉並の浅間橋以東で暗渠になった。放射五号線ができ、樹林を必要とする鳥が激減した。高度成長期の価値観による犠牲である。

2021年春、小金井の上水沿いにある樹齢70年から80年のケヤキが幾本もバッサリ伐られた。しばらくして、地元の上水沿いの木も伐採される赤テープが張られたが、その希少性を市に訴え、その危機を救った。

人は、森林を伐採し、農地を作り、ついには都市を作り、「便利さ」を追求してきた。その流れの中でも、玉川上水は何とか生き残ってきた。その中に住む虫や野草は我々よりずっと昔よりこの地で暮らしてきた。奇跡的に残った自然までも食い物にして開発しなければならないのだろうか。

講演2.リー智子氏(小平ちむくいの会代表)

玉川上水・・東京の東西を貫く、唯一無二の貴重な存在・・・

玉川上水沿いには縄文遺跡がない。なぜなら「川」がなく人が住むのに適していなかったからだ。

都心に向かって周囲の樹木が連続して繋がっている「川」は玉川上水だけだ。

用水としての機能が少なくなり、暗渠や道路にしようという計画があったが、文化人を中心とした反対運動によって難を逃れ、生き残って現在に至っている。その時、市民と行政が一体になって開発と環境の問題を考えた小平方式の教訓が現在十分に生かされていない。

ある学者は「玉川上水は水と緑の大動脈」と呼んだ。「玉川上水・ラムサール条約の可能性を探る」というシンポジュウムを3回行った。その結果、人が生き続けられるためには、生き物を守っていかなくてはならないということを学び、さまざまな活動を行ってきた。

専門家を講師にお呼びして、子ども向けの「昆虫の観察会」を何回も行った。「変形菌を探そう」「クモの観察会」「用水路ガサガサ」などの企画を開催してきた。3年間にわたり「玉川上水46億年を歩く」というイベントを企画した。

玉川上水の歴史と生き物について知れば知るほど、玉川上水の価値は計り知れないことが分かってきた。

野村亮氏(福生NPO法人 自然環境アカデミー専務理事)

 ―フォレスト・イン昭和館北の森の鳥類調査―

フォレスト・イン昭和館北の森の散策案内を2009年から行っている。樹齢90年を超える木々も多い。(赤松、椚、楢、山桜が多い)参加者にその時見られる植物、虫,鳥の話をしている。北の森での鳥類調査も12年間に渡り行ってきた。(環境省が行っている渡り鳥の調査)鳥を捕獲し、測定・記録し、個体ナンバーの足輪を付けて放鳥する。

シジュウカラ、アオジ、ソウシチョウ(外来種)が多く、ヤマガラ、ウグイス、シロハラ、ヒヨドリも多い。

年間通しての放鳥はシジュウカラ、ヤマガラ、ウグイス、ヒヨドリ、モズなど10種

冬季のみの放鳥はアオジ、ソウシチョウ、シロハラ、ジョウビタキ、など15種

春・秋の渡り時期のみ放鳥キビタキ、オオルリ、クロツグミなど5種

捕獲した鳥は、足輪のついていないものが多いが、足輪のついたものもある。中には自分が足輪を付けた鳥もいる

講演後の質疑応答

Q.観察を続けてこられ、最近野鳥に変化はありますか?

A.ハナミヅキ通りに建物が増えたことが原因と思われるが、ホウジロ、カシラダカが減っている。コゲラ、ウグイスには変化はない。

Q.最近、楢の木の立ち枯れが目立つのですが。

A.体調5ミリほどの虫の仕業。病原菌であるナラ菌を増殖させることで、水を上げる機能が阻害され枯れる病気。最近大変増えている。

Q.最近カラスが多くなってきているのですが。

A.昭和館の北の森は、近隣に生息するカラスが集団でねぐらを取れる場所になっている。ねぐらに帰る前に立ち寄っていると思われる。

Q.代官山は残るといわれていますが、森や動植物は大丈夫なんでしょうか。

A.どれ程かはっきりとは言えないが、森にも絶対影響はあると思います。森は森だけであるわけではない。ゴルフ場と密接な関係があり恩恵を受けています。