第2回 アセスメント条例・法律問題の学習会を開催しました

テーマ「アセスメント条例・法律問題から考える」

7月30日(土)於昭島市公民館3F学習室にて、第2回学習会を開催しました。
3名の講師より講演がありました。いずれも今後の運動を進めていく上で、とても重要な内容でした。

講演Ⅰ 「アセスメントと地域の力」 

講師:傘木宏夫氏(地域づくり工房代表理事)
◆アセスメントとは、開発行為の構想・計画・実施の各段階で、環境や社会・経済に与える影響を事前に見積もり、配慮(マイナス影響の回避とプラス影響の増進)に寄与すること。こうした事前配慮の適切さは、開発の影響が及びうる地域社会との十分な情報交流によって担保される。日本の法令や条例に基づくアセスメント制度は諸外国に比べて遅れており制約が多い。

◆アセスメントは意思決定のための素材提供・参考のためのものであり、事業をするしないを決めるものではない。賛成・反対の意見を求めているものではない。その中で、事業者はハードルが高いと断念せざるを得なくなることもあり得る。

◆地域住民は何が心配なのか、守りたいものは何か、声やデータを示し事業者がアセスメントすることを示し、実行させることが重要。

◆制度(都条例)に基づく手続きを活かした制度アセスを最大限生かす。
  1. 都条例の評価項目には最大の問題となる「交通」が設定されていない。「大気質(大気汚染・振動・騒音等)」に結び付けて、想定している交通量・交通流を明らかにさせて、そこから渋滞や安全・防災などについて想定される問題を意見し見解を引き出す。
  2. 「災害」の項目も設定されていない。意見により、想定している降雨強度や調整池の規模などの見解を引きだすとともに、雨水浸透工法や調整池の規模や配置により、景観面など周囲との調和を図らせる。
  3. 昭島市からの意見は都にとってとても重要なものとなるので、先手を打って、市民団体の側から「私たちの配慮書・方法書」を提示し、事前に配慮されるべきことを明らかにしていく。
◆制度アセスで網羅できない部分は、事業者による自主アセスにより説明責任を果たしてもらう。
例えば、
  1. ISO14063(環境コミュニケーションに関する企画)に準拠して、内容・実施時期・対象者・方法を明らかにさせる。
  2. 融資元の金融機関に、投資の観点からどのようなチェックを行うかを説明させる。
  3. 交通や景観について3D-VRシミュレーションを用いた説明を求める。
◆上記二つのアセスで対応できないことやデータ等への不安については、住民が自ら調査する住民アセスを経て働きかける。(Ex.大阪万博に向けた市民からの配慮書・方法書、阪神淡路大震災での震災復興道路計画への対応等)焦点を絞り、住民参加型で調査することで、住民に現状と計画による影響を実感してもらう。

講演Ⅱ 日野旭が丘での工場跡地への物流センター建設反対運動の経験 

講師:鈴木隆雄氏(東芝跡地の巨大物流センター旭が丘住民協議会)
冒頭、「ゴルフ場がなくなってしまう昭島の計画は、自然破壊であり、地球温暖化の観点からいっても絶対止めさせなければならない。英知を結集し頑張っていただきたい」と力強い連帯の意思表明がありました。

日野市での計画は、市が誘致した計画でもあり、市が積極的に動かないという困難性がありながらも、建設予定であった2棟を1棟にさせ、建物の規模も大幅に縮小させました。この多彩な運動の経験をもとに多くの貴重な助言・指摘をいただきました。
  • GLPの計画では倉庫の高さが35から55メートル。少なくても隣の団地と同じくらいに縮小させる必要があるのではないか。
  • 日野では流入車両は1日1800台。それを1200台に縮小させた。結果的にアマゾンなど大きなテナントは入らなかった。昭島の計画では、車は5800台も流入し、しかも周辺は狭い道路ばかり。(日野はもっとずっと道路が広い)市の担当者はどう考えているのか。説明させるべきだ。
  • ゴルフ場をコンクリートで固めると、雨水は下に浸透しない。その処理はどうするのか。
  • 今、樹木は何本あり、何本残すのか。
  • これだけ電力不足が叫ばれているときに、電気は太陽光パネルを設置して自前で賄うべき。
  • トラックを全て待機させる場所の確保は大丈夫だろうか。周辺道路に待機するようなことにならないか。また、5800人もの運転手の食事場所の確保は大丈夫か。コンビニ利用のため周辺道路に駐車することになるとますます渋滞することになる。大迷惑だ。
  • GLPとの協議機関の設置と定期的な協議が必要。
(また宣伝活動と会の運営に関するアドバイスもいただきました)

講演Ⅲ GLP開発地区の法律規制関連問題

講師:長谷川博之氏(考える会共同代表・都立高校講師)
GLP開発計画に関わる自然・環境系法規制について国レベル・都レベル・市レベルでの整理と情報収集を行い、その報告があった。アセスメント条例関係は、傘木さんの発表にお任せするとして、市のまちづくりや環境に関する総合計画・基本計画、条例、指導要綱を見る限り、そのどれにも、水と緑の保全が謳われている。
  • 東京都景観条例における玉川上水景観基本軸では、対象区域を玉川上水の中心から両岸に100メートルの範囲としてあり、様々な景観形成基準を設けている。東京都の場合は特に、色彩のガイドラインを作成しており、点数化しているのが特徴である。それに基づいて、都は事業者に指導を入れることになっているが、悪質な場合は、罰則規定の適用や景観条例審議会も開催されるが、そういうケ-スは少ない。届け出制なので、いったん届けが出てしまうと、変更がきかないのが難点である。
  • 東京都自然保護条例における制度の方向性は2つある。1つは、開発許可制度(第47条)で、開発地が自然地を一定規模以上含み、自然保護審議会が審議する場合、もう一つは、緑化計画書制度(第14条)で、1000㎡以上の民間施設が対象で、届け出制。今回の開発は、代官山を除いてきており、開発対象地域には、自然地がないため、後者の扱いになり、緑化計画書の提出と緑化基準25%を守らなければならない。
  • 都からのアドバイスを頂いたが、地元自治体が、都市計画法に基づき、地区計画を策定すれば、市独自に建物の高さや壁面規制、緑地の規定まででき、目標も設定できるので、まちづくり方針とも整合させられ、市も指導しやすいはずである。しかし、住民参加制度がなく、住民の意見をどう反映させていくかが課題。市と事業者によって出来上がった地区計画の情報開示を市民が求め、意見を出すことは可能。市(都市計画部)との第1回懇談会では、市は、今回の開発地域で、地区計画を策定する予定であるとのこと。早くても半年(から1年)はかかるそうだ。
  • 規制の多くは、都の条例が中心になるが、市の住宅開発指導要綱は、市が、事業者に、公園・緑地を6%確保するよう指導できる根拠となるものである。市もしっかり守らせると言っている。
  • ただ、残念なのは、建物や緑地に関する条例や規制はあるが、緑の質や、動植物の保全に関わる規制は、国や都のレッドデ-タブックの対象になっている生きものがいれば別だが、その対象がいない場合は、規制できないのが現状である。アセスメント条例もしかりである。

お知らせ・予定されていた講演Ⅲ「巨大物流センター建設と法律問題」は、講師田所良平氏(三多摩法律事務所 弁護士)の体調不良による欠席の為延期します。