玉川上水のホタル

5月の下旬から6月の初旬の夜8時頃、はなみずき通りから玉川上水にかかる美堀橋の周辺には、お子さん連れのご家族で賑やかになり、柵越しにゆらぐホタルの光を見つけた子どもたちの嬉しそうな声を聞くと、微笑ましくなります。

昭島では、成隣小や拝島高校で、長年、ホタルの養殖・放流活動が行われてきて、水辺の散歩道では、ホタル祭りなども行われていたのですが、最近は、散歩道のすぐそばまで、住宅建設が行われ、光害で、あまり見られなくなっているのではないかと心配されます。

5月頃から発生しているホタルは、ゲンジホタルですが、新たに放流している人がいるのか、昔放流していたものが生き残っていたのか、立川地域で、放流されているものが移動してきたのか、大変重要なポイントです。

というのも、ホタルは、かつて、多摩動物園が中心になって、ホタルの放流や幼虫配布を盛んにやっていた時代があり、最初は、遠い地方(長野県とか)のホタルを持ち込んでいたのですが、その後、ホタルの地域遺伝子型が確定してからは、遺伝子の多様性(これは、生物多様性の一要素です)を重視した観点から、できるだけ、地域の遺伝子型をもったホタルの幼虫の飼育や放流をする方向に、方針転換されてきた歴史があります。先日、亡くなられた矢島稔先生(元多摩動物園長)が、中心になって、全国で取り組まれてきた大きな事業でした。

昭島でも水辺の散歩道で放流活動をしてきた人達も、遺伝子配慮の活動をしてきたと聞いています。

東京のホタルは、人間の保護・養殖・放流がないと実現できない状況で、望ましくは、ホタルが自然発生(自然再生産)される環境を取り戻せれば、ベストですが、これだけ都市化し、ホタルの一生をカバ-できる環境は皆無と行ってもいいでしょう。(その環境を理解できる人もきわめて少数なのです。)

たかがホタルですが、その完全復活には、まだ、気の遠くなるような共通認識と努力や文明の方向転換が必要なのです。

GLP昭島計画は、玉川上水のホタル完全復活(自然発生)に逆行するどころか、これまでホタルの復活に向けて取り組まれてきた方々の努力を台無しにしかねないものです。

玉川上水のホタルが、今後も初夏の風物詩となることを願っています。